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 セント・キルダ島St Kilda。絶海の孤島であり野鳥の楽園である神秘の島を紹介します。

 セント・キルダ島(セントキルダ島)(正確にはセントキルダ諸島)。スコットランドの北西の大西洋上に位置する島です。1998年にこの地を訪れました。旅行記はこちら。
 映画(「世界の涯てに(せかいのはてに)」)のロケ地になるくらいだから・・・と軽い気持ちで旅行の計画を立て始めたらとんでもない所で、まさしくそこは「世界の涯て」でした。
 世界遺産にも指定されている素晴らしい島ですが日本ではほとんど紹介されていません。そこで、私が集めた情報を紹介します。
Geography, Nature, History
St.Kilda map この地図の元ネタThe National Trust for Scotlandです。
地理 セント・キルダ島(正確には群島)。ヒルタ島Hirta、ボーレー島Boreray、ソアイ島Soay、ダン島Dunの4つの主な島から成ります。人が住んでいる(いた)のはヒルタ島だけで、他の島は上陸も困難です。
 スコットランドscotlandの沖、アウター・ヘブリディーズ諸島Outer Hebridesから西に約60キロ。北緯57度49分(参考:樺太の真ん中が北緯50度くらい)、西経8度34分。面積853ヘクタール。標高は一番高いところで430メートル。ヨーロッパで最も高い断崖絶壁を持ち、コナシェアの丘Conachair hill は高さ430m(って事は標高と同じじゃん)。
歴史  6000万年前の火山活動によって造成され(世界で最も古い火山跡があるそうです)、氷河期に削られて断崖絶壁が作られ、その後の海面上昇によって現在の形になりました。
 人間が住むようになったのは2000年前の青銅器時代。バイキングが生活していた跡が残されています。僅かな農耕と海鳥の捕獲、羊の放牧をして暮らしていたそうです。
 800年くらい前からはスコットランドの領主MacLeod of MacLeodに統治され200人弱の人々が自給自足に近い生活をしていました。しかし、貨幣経済の影響や天然痘の発生等により生活が立ちゆかなくなり、1930年に政府の指導により住民は全てスコットランド本土に移住しました。
 1957年に 5th Marquess of Bute(5代Bute侯爵?)からナショナル・トラスト・フォー・スコットランドNational Trust for Scotland (NTS)に土地が寄贈され、同じ年に国立自然保護区national nature reserveに指定されました。また1986年にはスコットランドで最初のユネスコ世界遺産(自然世界遺産−登録基準iii, iv)に指定されました。
 現在は、石造りの住居跡の他、学校や教会等が資料館として残されています。また、現在最大の住人(?)である軍の施設がたくさんあり、山頂にはレーダードームが作られています。この人たちはヘリコプターでやってくるそうです。
 また、ナショナル・トラストにより厳しく管理され(軍は間借りしている立場のようです)、年間の観光客は1000人(2000人と書いてある書物もある)に限定されています。夜間の宿泊もできません。

セント・キルダSt Kilda、名前の由来 一読すると、セイント(聖)・キルダさんが居て、その人にちなんで付けられたみたいですが、違うそうです。古代スカンジナビア語で盾(海から見たときの島の形が盾に似ている、言われればそうかもしれない)を意味する"Skilder"がなまったそうです。
自然  北大西洋で最大規模の海鳥の繁殖地です。カツオドリgannetの、世界最大の繁殖地があり約60,000つがいが生息しています。パフィンpuffin(ニシツノメドリ)のイギリス最大の繁殖地で140,000つがいが生息しています。鳥たちがもたらす羽毛と卵は島の住民の大事な食料と現金収入になりました。
 また、過酷な自然のためあまり多くの動植物は生息していませんが、隔離された環境から独自の進化を遂げた生物も見受けられます。なかでもソアイ島に生息するソアイ種と呼ばれる野生のヒツジは、鉄器時代そのままの形態を保っており、学術的に大変貴重なものだそうです。
LOST AND FOUND
映画「世界の涯てに」  1996年香港映画。原題、天涯海角。アジアの大スターで日本でも人気の金城武ケリー・チャン(陳慧琳)主演による恋愛映画です。主な舞台は香港ですが、スコットランドに逃避行(?)したケリー・チャンと、ケリーを追ってきた金城武が"世界の涯て"と呼ばれる地で再会するといった話です。
 これまた日本でも人気のフェイ・ウォン(と金城武)が主演の「恋する惑星」といった、90年代後半に流行した香港ヌーベルバーグの香りたっぷりの映画です。
 そもそも私たちがセント・キルダ島へいこうと思ったのはこの映画に影響されての事です(笑)。
世界の涯てに
「世界の涯てに」パンフレットより
スコットランド・ロケ地ガイド[協力:日本スコットランド協会]
 本作品のクライマックスの舞台となるセント・キルダ島は、スコットランド本土から約160キロ沖、ヘブリディーズ諸島の最西端に位置している。海運の中心地オーバンからだと、船で24時間というまさに"世界の果て"にある。 この島には、かつてはニシン漁を営む人々が住んでいたが、1930年にイギリス政府が接収して軍事基地をつくり、住人が追い払われた。その後、秘境的な自然環境を保護するため、ナショナル・トラストの資産となり、86年にはスコットランドで初めての世界遺産に指定されるに至っている。 青銅器時代からの生き残りとされるソアイ種のヒツジや、世界一大きいカツオドリが生息するなど珍しい生物も多い。映画のラスト・シーンで印象的なコナチェアの断崖は、400mを超える高さで、イギリス一を誇る。島に死者の魂が集まるという伝説は、アジアやオセアニアの島々にも伝えられており、死後は海の彼方にある自分たちの起源の地に回帰するという概念から生まれたもののようである。 現在、この"世界の涯て"へは、近くのバラ島から観光ツアーが出ているが、普通の観光地とは違うので時間的な余裕が必要だ。
 また、テッドのKINGS HOUSE HOTELはスコットランド中部の山岳地帯、トロサックス地方の人口200人の小村Balquhidderに実在している(01877-384646)。 古都スターリングから車で約1時間ほどのところにあり、映画に出てくるように、神秘的な湖と雄大な山々の景観が楽しめる。ホテルはかつては狩猟小屋で、現在はツイン1、ダブル4、ファミリー2の部屋からなっている。家族経営ならではのアット・ホームなサービスが自慢だという。
 上記解説の中で、ラストの断崖のシーンがセント・キルダ島で撮影されたように書かれていますが、実際はスコットランドの別の場所のようです。実際行ってみてもそれらしい所はありませんでしたし、インターネット上でも違うらしいとの議論があります(あそこまでエキストラを数十人も運ぶなんて現実的じゃないし・・・)。
 KINGS HOUSE HOTEL は街道沿いにあるのですぐに見つかりました。いわゆるB&B(ベッド&ブレックファースト)です。近くにはスコットランドの英雄、ロブ・ロイのお墓もあります。
地球の歩き方
 ご存じ地球の歩き方のスコットランド編。私が持っているのは98-99年版です。03-04年版には以下の表記はありません。
 情報の細かさでは他のガイドブックを引き離している地球の歩き方ですが、セント・キルダ島に関してはこれだけでした。
 これを読むと簡単に行けそうですが、ツアーと言えるほどの物はほとんど無く、あってもその場で予約して参加することはまず不可能でしょう。
 RSPBは「英王立野鳥(鳥類)保護協会」ですが、NTS(ナショナルトラストスコットランド)の間違いだと思います。
arukikata
「地球の歩き方 スコットランド」98-99版より
 バラ島Barra近くには、パフィンの最大コロニーがある野鳥ファンの聖地、セント・キルダ島St Kildaがある。ニシン漁の衰退とともに無人島となり、今はRSPBの所有地。
 野鳥の楽園、セント・キルダ島St Kildaツアー スコットランド最大のパフィン繁殖地。バラ島Castlebayのiでツアーの日時を教えてくれる。要チェック!
How to go there?
 イギリス軍関係者にコネがあれば別ですが、クルーザーを借りるか、何れかのクルージングツアーを探して参加することになります。

 私が利用したのはWesternedge Charters Ltdでした。通常セント・キルダ島へのツアーは何処も1週間程度です。しかし、交渉して2泊3日で組んでもらいました。小さな船(2人用船室が3つ)なので、季節はずれ(私が行った5月等)であれば交渉に応じてもらえると思います。

 Island Cruisingを利用したという情報を頂きました。こちらは大きめの船のようで、2人用船室が6つあるようです。

 他にはThe National Trust for Scotland のリンクに利用できるツアー会社の一覧があります。

 あと裏技みたいな感じですが、セント・キルダ島の調査や施設の修繕の為、The National Trust for Scotlandで定期的にボランティアを募集しています。問い合わせてみるのもいいかも知れません。
Link
UNEP World Conservation Monitoring Centre
wcmcUNEP(United Nations Environment Programme)国連環境計画の組織であるWCMC(World Conservation Monitoring Centre)世界動植物保全監視センターの、世界遺産を紹介しているサイトです。セント・キルダ島に関する"学術的な"解説が詳しく載っています。
St Kilda - The National Trust for Scotland
wcmcスコットランドのナショナルトラストThe National Trust for Scotlandが作成しているセント・キルダのページ。"読み物"的な楽しい内容になっています。セント・キルダへのツアーを行っている会社の一覧が載っています。ST KILDA CLUB の案内もあります。
岡山大学文学部考古学研究室 新納泉教授
1px教授がイギリス滞在中のエッセーがあります。「ブラック・ハウス」と「セント・キルダ」でセント・キルダを詳しく紹介しています。
Photo
セント・キルダ島 砲台跡puffin セント・キルダ島 砲台跡
ナショナルトラストの管理人です。1996年にTBSの「世界遺産」で紹介された時もこの人が案内人でしたので2年もここで暮らしているのでしょうか。
ソイ・シープ Soay Sheeppuffin ソイ・シープ Soay Sheep
「ソイ種」と呼ばれるこの辺りの島々にのみ生息する鉄器時代そのままの羊。自然に抜け落ちる毛を集めて衣類を作っていたそうで、島のそこいらじゅうに茶色の毛が落ちてます。
ヒルタ島 全景puffin ヒルタ島 全景
左端の建物が軍の設備。余り人は居ません。とてもフレンドリーでした。扇状に連なっている黒い屋根の家が昔の住居。中は羊臭い。
メインストリートpuffin メインストリート
左側は昔畑だったところだと思われます。右側に一列に住居が並んでいます。
世界の涯てpuffin 世界の涯て
氷河に削られた数百メートルの断崖絶壁。断崖の下は海です。断崖にはカツオドリをはじめ、多くの鳥たちが暮らしています。
海上からpuffin 海上から
湾を出ると殆どはこのような断崖絶壁す。それでも羊が飛び跳ねていたりして不思議でした。
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英国セント・キルダ島の何も持たない生き方―自分を幸せだと思う哲学 井形 慶子 (著)

 セント・キルダ島について、日本語で書かれた唯一と言ってもよい文献なので、一応紹介しておきます。島の一般的な情報はもちろん網羅されていますが、そこで実際に暮らしていた人々の様子が描かれています。

 ただ、これほどイギリス通の作者が世界遺産の島について全く知らなかったような、そして霊的な現象によって導かれるようにセント・キルダ島に心が向いていく導入部分が演出過多に感じられます。ある離島の歴史書としてはともかく、作家が書いた作品としては、私は好きになれません。そしてその“歴史書”の部分も、大部分は原作(参考文献)の引用のようで、それが井形慶子さんらしさを失わせているように感じます。

 また、「何も持たない生き方」を単純に「幸せだと思う」作者の意見には同意できません。晴耕雨読な生き方が出来るのであればそれもありですが、明日の命もわからない島の暮らしが本当に幸せでしょうか。もう少し中立的な立場で事実のみを提示し、読者に判断を委ねて欲しい。
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