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2003hawaii 10/07
 静かな朝。建物の周囲を散歩していると、家主さんに会う。「おはようございます」と日本語で言ってみた。たどたどしく日本語が返ってきた。写真を撮ろうとしていた花について、「朝は白、夕方は、赤くなる」と説明してくれる。丁寧にお辞儀をして去っていった。最果ての地で、何を思って暮らしているのだろうか。日系人の姿を見るとどうも感傷的に考えてしまう。

 朝食を終え、チェックアウトし、いざ出発。まずはひたすら南下。ハワイ島の周回道路を外れて本当の最南端を目指す。背の低い草が生えるばかりの荒涼とした風景が続く。時々生えている木は皆背が低く、強風にさらされている影響で、枝は水平に、かつ一方向に向いて伸びている。巨大な風力発電の風車が見えてきた。よく見るとMITSUBISHIと書かれている。舗装道路を外れると、いよいよ海が近づいてくる。かなりの荒れ地を走り抜け、ついに道が終わった。

 そこは何もない、ただの断崖だった。普通「アメリカ合衆国最南端の地」という立て札でもありそうなのもだが何もない(トイレもない)。アメリカ人には、こういった所に来る趣味はないのだろうか。GPSで方位を確認すると、南側が海なのでここらあたりが最南端であることは間違いない。強風に吹かれながらただ海を見つめた(だって他にすることがない)。

 来た道を逆にたどり、ハワイ島周回道路に戻る。今日の最終目的地はハワイ火山国立公園Hawaii Volcanoes National Parkだ。しばらく走るとナアレフNa`alehuの町に出る。トイレ休憩。町のあちらこちらにアメリカ合衆国最南端の表示。最南端のパン屋、最南端の不動産屋・・・。パン屋のプナルウ・ベークショップPunalu`u Bake Shopに入ってみると、これが結構面白い。クッキー(アメリカ最南端のクッキー。おみやげに買いましたが美味しかったです)やアイスクリーム等の食べ物の他に土産物コーナーもある。店の名前が入ったシャツ(アメリカの店って、よく店名入りシャツを売ってるね)や、地元のアーティストが作った飾り物もある。ハワイ島最南端へ来た折りには、皆さんも是非お立ち寄りを。

 またしばらく走ると、プナルウ・ビーチ・パークPunaluu Beach Parkに出る。別名、ブラック・サンド・ビーチBlack Sand Beach、溶岩が砕けて出来た、真っ黒な砂浜だ。海岸に出ると、日本語で書かれた看板が目に入った。「カメが休憩中です。5メートル以内には近づかないでください」。は?と思って砂浜を見ると、でっかいウミガメが居た。無気力に横たわり微動だにしない。普通ウミガメは産卵の時以外は上陸しないそうだが、ハワイ諸島ではよく見かけられるらしい。ハワイではカメものんびりしているのだろうか。

 小一時間も走ると、ハワイ火山国立公園に到着。標高が高いせいか、風か吹くと涼しい。園内唯一のホテルの食堂で昼ご飯を食べる。ここのホテルはキラウエア・カルデラKilauea Calderaの縁にあり、食堂の窓からは火口が一望できる。フライパンの底のような真っ平らな部分は、昔は煮えたぎる溶岩で満たされていたそうだ(ハワイの溶岩は水のようにさらさらなので、真っ平らに固まる)。

 案内所でレンジャーの人に今日の溶岩の状態を聞く。ハワイ火山観光の売りは、実際に流れる真っ赤な(もしくは赤黒い)溶岩を数メートルの距離で観察できることだ。今回の旅行で最も楽しみにしていたことだ。しかし、このレンジャーへの質問から最悪の一日が始まった。レンジャーの話だと、チェーン・オブ・クレーターズ・ロードChain of Creaters Rd.の終点から30分程度で溶岩が見られる所まで行けるとのこと。日没(6時頃)以降は危険なので進入が禁止されるとの情報も得た。今は3時くらいなので、ホテルへチェックインしてから5時近くに出かければ大丈夫だろうと思い、公園内唯一のホテル、ボルケーノ・ハウスVolcano Houseへ向かう(と言っても道路の向かいだ)。

 ボルケーノ・ハウスは、ハワイ島で最も由緒あるホテルの一つ(one of the most ... この英語表現は矛盾しているようで好きではないのだが)で、古くはハワイの王侯貴族、また「トム・ソーヤの冒険」で有名な作家のマーク・トゥエインMark Twainも常連客であった。ロビーの暖炉の火は、かの弘法大師が灯されてから1,200年、消えずに続いているそうだ(嘘です。約150年です)。しかし、火口が一望できる側とその他の別棟とは料金差が激しい。当然一番安い部屋を予約した我々は別棟の半地下のような1階。まあ、雨露をしのげれば問題はない。

 荷物を下ろし、トレッキングの準備をし、いよいよ溶岩を見に出かける。ホテル(公園の入り口)からチェーン・オブ・クレーターズ・ロードの終点までは以外と遠い(約32キロ)。道は大きく蛇行しながら標高を下げていく。多くの人は日没後に山肌を彩る炎を見に来るので(昼間は周囲が明るすぎで見えない)、この時間から混み始める。既に多くの車が向かっていたが、それでも終点からさほど遠くない位置に車を止めることが出来た。

 いざ、出発。レンジャー小屋から20分程度歩くと、舗装道路が溶岩で寸断されているおなじみの場所までたどり着く。そこから内陸に向かって固まった溶岩の上を黄色い標識に沿って進む。溶岩が流れては冷え固まり、またその上に溶岩が流れ固まる。時には表面だけが先に固まり、中が空洞になり崩れ落ちたような所もあり、非常に歩きにくい。30分歩いたが、全く到着する気配はなかった。そろそろ引き返さないと6時までに戻れない。「帰ろう」と妻が言い始める。しかしもう10分も歩けば熱い溶岩が見えてきそうな気がして、引き返す気にはなれない。ハワイでの最大の目的であった流れる溶岩を目前にしてなんで帰ろうと思うのか。なんだか情けなくなって「だったらここに居れば」ときつい言葉が出てしまった。

・・・ケンカ中・・・


 結局流れる溶岩を見ることもなく引き返し、食事もそこそこに二人とも疲れて寝てしまった。後から確認したところ、流れる溶岩を見るためには2時間程度歩かなければならなかったようだ。レンジャーへの質問「何処でラバ(溶岩)が見られるのか?」が間違いで「何処でホット・ラバ(熱い溶岩)が見られるか?」というのが正しい表現らしい。結果的に妻の判断が正しかったわけだが、それでも軽装ですれ違った人を思い出すと(日没後もたくさんの人が歩いていた)、無理をすれば行けたかな、という思いが残る。これまで旅行で予定したところに行けなかったことがなかったので、後味の悪い物が残ってしまった。


10/07 end


Photo
サウス・ポイントpuffin サウス・ポイント
近くには釣りをしている人も居ました。
風に吹かれた樹puffin 風に吹かれた樹
牧草地の中に転々と家があるのみ。1ヶ所だけ、コンクリート造りの強固な建物が残っていた。アメリカ本土からマーシャル諸島へ飛ばすミサイル実験の監視をしていた所。
オヒアの花puffin オヒアの花
花の名前はレフア。溶岩が冷えて出来た大地に最初に生える木。
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