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2007canada 07/08
 よくわからないままに夜が来て、よくわからないままに朝が来る、極北の夏。夕べもオーロラが見えないかと見上げてみたが、ずっと薄明かりのままだった。ロッジの裏は、車が通れるぐらいの空間は目の粗い砂利で埋め立てられているが、その向こうは湿地帯になっている。ひょっとして、この町一帯が湿地の上に作られた埋め立て地なのだろうか。

 朝ご飯は、リビングに置いてあるマフィン、食パン、ジャム、マーガリン、リンゴ、コーヒーメーカー、紅茶、牛乳、湯沸かし器、トースターを使い、セルフサービス。今日の予定は午後からホエールウオッチング、午前中は何もない。ロッジの付近を散策。メインロードから外れて北に向かうと、少し小高くなっていて、斜面一帯に小さな花がたくさん咲いていた。短い夏が今まさに始まろうとしている。ただし、“熊注意”POLAR BEAR ALLERTですので、うろつき廻るのはほどほどに。


 ちなみに今日は日曜日。日曜の午前中と言えばカブリバさんja.wikipedia……ではなくて、みんなで教会。こんな小さな町でも、3つも教会がある。昼飯を食べられるところを探すが、レイジー・ベア・ロッジのカフェを含む多くの店が休み。やっと見つけたカフェ、シーポート・ホテルSeaport Hotelに入る。“Poseidon Sub”(なんでチキンサンドイッチがポセイドンなんだ?)と“Vegetable Burger”(大豆のパテを使ったハンバーガーもどき)、そして今日のスープは“タイ・チキン”(なんで極北の町でタイなんだ??)……香辛料が効いたスープが意外と美味い。

 スーパーに寄ってみる。一応の食材、日用品は売っているので、この町でも生きていくのに困ることは無さそうだ。たいていの住居からは徒歩圏内なので、車が無いと生活できない場所よりも便利かも。ミネラルウォーターと、なんとキャンベルCampbell'sの怪しげなカップラーメンがあったので買ってみる。

 13時30分、ロビーに集合。昨日一緒に到着した年配の夫婦に、小さな女の子を連れた若い家族が加わる。そしてレイジー・ベア・ロッジLazy Bear Lodge & Cafeのオーナー兼ガイドのウォリーと、助手のダグラス。バンに乗り込み、港を目指す。若い家族は地元のカナダ人、年配の夫婦はなんと南アフリカから……今まで会話をした中では最も遠い国の人だ……、そしてアジアの島国から。国際色豊かなバスは、程なくして港に到着。金属製のボートに乗り、まずはチャーチルの歴史散策へ出発。

 チャーチル川Churchill Riverを横切り、対岸の岬を目指す。飛んでくる水飛沫が塩辛い。海に行くと、一応舐めてみる事を自分の“お約束”にしているのだが、これで北極海も制覇。で、いい感じに濡れてきたところで小さな桟橋に到着。ここに1717年にその歴史が始まる石造りの砦、プリンス・オブ・ウェールズ砦Prince of Wales Fortがある。

 まずは、銃を背負ったレンジャーにご挨拶。この時期でも、まれにシロクマが現れることがあり、観光客のために警備にあたっているそうだ。四輪バギーで颯爽と走り、我々の行く手を先回りし、常に警戒を怠らない。さて、我々一行は列になり、砦を目指す。途中、記念碑のようなところでガイドのウォリーによる講釈が入る。時々ガイドブックで目にした年号や人物名が出てくるので、チャーチルの歴史を語っているようなのだが、ほとんど理解できない。それよりも寒い。7度程度の気温に加え、ハドソン湾の寒風をまともに受ける。ウォリーの講釈は、歴史から自然観察に移る。「これがなんたらデイジーで、こっちはかんたらベリー……」、止めどなく湧き出る知識の泉、素晴らしいの一言だ。

 さて、いよいよ砦へと足を踏み入れる。ここは函館五稜郭のような星形(ここのは四角形なので手裏剣型と言った方が近い)をした西洋式の砦で、北米におけるイギリスの国益を代表するハドソン・ベイ社Hudson's Bay Companyが、先住民と毛皮取引をする為に交易所trading postを作った事に始まる。その後、北米での覇権を競うフランスと戦争状態となったため、守りを強化し、大砲を備え付け、現在残されている形となった。ちなみにハドソン・ベイ社は、紆余曲折を経ながらも北米最古の“老舗”企業として、現在も手広く事業を行っていてる。

 砦の中には錆びた大砲がたくさん残っていて、“兵どもが夢の跡”感を漂わせている。今の季節はお花畑に囲まれてのどかな感じであるが、本国を離れ、ここで越冬していたイギリス人の生活は如何な物であったのだろうか。原野に分け入り、先住民と積極的に交流しながら貿易を行ったフランス人に対し、イギリス人は砦にこもり、契約した先住民がやって来るのをひたすら待っていたそうだ(ナショナルジオグラフィック海外旅行ガイド カナダ編より引用)

 ボートに戻り、お待ちかねの、ホエール(イルカ)ウォッチングへGo!!。チャーチル川を少しさかのぼると、すぐに白い影が見え始める。ベルーガBelugaの登場だ。白いのは親イルカ、灰色は子供イルカ、と、バンクーバー水族館で教えてもらったが、体の大きさはあまり変わらない。初めは遠目に見えていたが、あっという間に群れに囲まれ、手を伸ばせば届きそうな距離をボートと併走する姿が見られる。望遠レンズでは収まりきらなくなり、広角レンズに付け替えて写真を撮りまくり。

 6月下旬から(今年は6月15日に最初の目撃があったそうだ)8月にかけて、3,000頭のベルーガがチャーチル川に集まってくる。普段はハドソン湾内を回遊しているが、この時期は出産、子育てに適した場所に集まってくるそうだ。おかげで世界でも最も高密度に野生のクジラを見ることが出来る。暫くすると、ウォリーが水中マイクを水に入れる。すぐに“海のカナリア”とも言われるベルーガの鳴き声が聞こえてくる。海の中は、結構賑やかだ。

 16時、ホエールウォッチングを十分に堪能した……あまりにも当たり前に居るので、ちょっと飽きてきた……ところで今日のツアーは終了、ロッジに戻る。さすがに少し疲れたので、今日は非常食を中心とした食事にする。リビングから電気湯沸かし器を失敬し、ポットの中に直接“パパッとライス”こしひかり100%(by はごろもフーズ)とおかずの缶詰を入れ温める。これで下手なレストランよりも遙かに美味い、炊きたてもちもちのコシヒカリが食べられる。そしてキャンベルのカップラーメン、こちらは最悪でした。スープが売りの会社なのに実に薄っぺらい味。

 夕方から、雨が降り始める。明日はいよいよオプショナルツアーのシーカヤックなのに、大丈夫だろうか。


07/08 end


Photo
チャーチルの初夏puffin チャーチルの初夏
坂の向こうはハドソン湾。
プリンス・オブ・ウェールズ砦puffin プリンス・オブ・ウェールズ砦
チャーチル川をのぼれば行く先は広大な原野。イギリスにどれだけの利益をもたらしたのか。
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