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2008taiwan 06/25
 さあて今日は何を食べるかな。食あたりをすることもなく、体調を崩すこともなく、朝から元気に食探し。朝な、夕な、何度も顔を合わせるドアマン(ドアウーマン)に「オハヨーゴザイマース」と見送られ街に出る。最初の頃は「ニイハオ」だったが、今日で6日目、そろそろ覚えてもらえたようだ。それにしても、皆、笑顔で心地良いホテルだ。日本語専任スタッフも居るが、他の皆さんもそこそこしゃべれる。

 ホテル裏の通りにある食堂で、蚵仔麵線(カキ入り台湾ラーメン)と飯糰(台湾おにぎり)を注文。蚵仔麵線は、素麺のような細い麺と、名前のとおりカキが入った少しとろみのあるスープ。パクチーが載って、ちょっと南洋な……タイとか……感じ。台湾で食べるスープにしては珍しくこってりだ。飯糰は、ラップを使い、巻き寿司を作る要領で具材を包み込みこんだおにぎり。おもな具材は肉髭。豚肉を、どういうわけだか粉末にした物で、少し甘い。日本で言うところの田麩(でんぶ)のような物か。

 10時丁度発の新幹線で出発。今日は台中站Taichung(台中駅)まで。わずか小一時間の旅。ここから在来線(台鉄)に乗り換える。珍しく“台鉄”と“高鉄”が駅で連絡しているのだが、“台鉄”台中駅ではないことに注意。日本の新幹線のように……新横浜とか新神戸とか……在来線の同名駅と直接接続しない場合は名前を変えてくれるとわかりやすいのだが。

 ともかくここ、新烏日駅から、目指すは台湾ローカル鉄道、集集線の旅へ出発する。小一時間待ち、11時41分発の車埕駅行きの列車に乗る。3両編成のディーゼル車だ。ローカル線とは言え、「集集線周遊きっぷ」が発売されている(らしい)ほど、近年は観光に力を入れていて、混雑が心配だったが全く問題なし。それでも若者集団……おまえら学校行かないのか?……が居たりして、休日はもう少し混むかも知れない。ちなみに周遊きっぷは買い方がよくわからないので、単純に終点までの切符を新烏日で購入した。

 暫くは西部幹線……日本で言うところの東海道……を走るので、民家や工場も多く見受けられる。通勤利用に最適化された横長ロングシートなので、景色を見るためには振り返らないといけないところが欠点。しかし、ちゃんとトイレ(準和式)が付いているところはグッド。冷房はかなり頑張っているので、軽く羽織る物があった方がよいかも。それにしても途中の田中駅は、なんであんなに「田中田中田中……」と強調されているのだろうか?

 12時23分、二水駅。ここからいよをいよ集集線に入る。南下する西部幹線と別れ、東へと向きを変える。幹線を離れるに従い、バナナや椰子の木が目立つ、南国の田園風景が広がる。この先、源泉濁水龍泉と“水っぽい”名前の駅が続く。集集線に沿って流れる濁水渓は台湾で一番長い川なので、恐らく水にまつわる逸話が色々あるのだろう。

 濁水駅を過ぎると、並行して走る道路は立派な楠木の並木道となる。台中から日月潭へ向かう途中の道なので、日本からの観光客で集集線に乗る人は少なくても、この道を通った人は多いだろう。列車が通るのを待ちかまえて、車道からこちらにカメラを向けている人も多い。ディーゼルエンジンの音に耳を傾けていると、ここが台湾の地であることを忘れてくる……時々椰子の木が見えるのを除けばだけど。若者集団は集集駅で降りていった。ここは集集線沿いでは一番の観光ポイントらしく、レンタサイクル屋があるのが車窓からも見て取れる。なかなか健康的なグループ交際だ。しかし残念、暫くすると、大雨が降り出した。

 水里駅で、ほとんどの乗客は降りていった。ここからバスに乗り換えれば、ローカル列車+日月潭観光のモデルルートが完成する。しかし今日の目的は台湾ローカル列車の旅、終点まで乗っちゃいましょう、そして終点からタクシーで日月潭へ向かおう、と、この時は目論んでいた……(<-なんかオチが見えそうな文章)。

 13時10分、終点の車埕駅着。雨は勢いを増している。一瞬、このまま降りずに引き返そうかと思ったが、まあ、降りてみることに。四方を山に囲まれた、山あいの小さな駅。数少ない乗客を降ろし、折り返しの乗客を乗せ列車が去っていくと、静かな風景の中に我々だけが取り残されてしまった。車窓から見た集集や水里駅の賑わいはなんだったのか、霧に煙る山が見えるだけの、全くの別世界。この時点で、日月潭行きは完全に却下されてしまった。それよりなにより、腹へったんだけど、店、あるの?

 とりあえず、食事にありつきたい。駅の事務室に行くと、お、あった、これこれ、車埕名物、木桶弁当の桶が窓口に置かれている。中に居たおばちゃんに、桶を指差し、すがる目で訴える。こちらが言葉が通じないと理解すると、おばさんも身振り手振りで「その弁当が食べたいの?、それならこっちよ」と、駅前から続く坂道を指差し教えてくれた。

 坂を少し登ると、古い集合住宅があった。そして一軒の木工屋さんがあり、「木桶弁当専売店、うちが本家本元、元祖だぜ」って感じの看板が出ている。「車埕小飯店」という名前らしい。元祖であろうが無かろうが、他に見あたらないので選択肢はない。店頭で何か細工物をしていたおじさんに、メニューを指差しVサイン(2つ注文)。うなずいたおじさんは店の中に声をかけ、出てきたおばさんに何かを告げる。よかった、飯にありつけそうだ。

 プラットホームを見渡すベンチに座り、弁当を食べる。木桶弁当と言っても、桶に直接ご飯が詰まっているわけではなく……本来はそうだったのかも知れない……、紙容器に入った弁当が桶の中に入れられている。桶は土産に持って帰れと言うことだ。桶には蒸気機関車の絵をデザインした「車埕小飯店」の焼き印が押されている。基本は排骨飯(骨付き豚を竜田揚げにした感じ)で、肉の下に野菜や山菜が盛りつけられている。そして大根のスープ付き。サラミ風のソーセージらしき物が妙に美味しかった。雨が上がると強い日差しが差し始め、四方の山からうるさいほどの蝉の合唱が始まる。ホームに傘を広げていると、見る見ると乾いていった……誰も居ないから好き勝手。

 そのままベンチに座ってまったりとしていると、駅のおばちゃんがやってきて、何かを伝えようとしている。駅付近の観光案内が書かれたチラシを渡し、「こんなとこに座ってないで、この先に綺麗なところがあるから行ってきなさい。次の電車はまだ1時間あるから。荷物は事務所に置いていっていいから。さあさあ。」(以上、推定訳)。いや、別に好きでここに座っているんだけど……。

 仕方がないので、重い腰を上げ、散歩に出かける。線路を延ばした先に幾つかの立派な建物が造られている。どれも新しい。昔林業が盛んだった頃の姿を解説した観光資料館になっていていて、周囲の山から切り出した杉や檜木を引き込み線に停めた貨車に乗せ替える様子が、かつて使われていた本物の機材を使って再現されている。説明のパネルには、なんと日本語の解説も。この地にダム、発電所を作った日本人の所業が、功績として紹介されている。日本が台湾を統治したことは、確かに良かった面もあるかも知れないが、それが正しかったとはとても言えない。なんだか複雑な気分だ。

 更に先に行くと、小さな湖のそばに観光案内所を兼ねた休憩所がある。どことなく和風なその建物は、湖にせり出して涼しそうな作り。かき氷か、ところてんでもあれば座敷に座ってくつろぎたいところだ。何処から来たのか、ちらほらと観光客が居る。また少し坂をのぼると、土産物屋と喫茶店が一体化したような、ちょっとおしゃれなお店が。ここでも木桶弁当を売っているが、桶に押された焼き印は、お猿のマーク、この店のトレードマークのようだ。お茶でも飲んで、ちょっと休憩しましょう。

 窓際の席に座り、アイスコーヒーを注文。笑顔の爽やかなお兄さんだが、全く言葉は通じない。なんかレジで協議しているなと思ったら「220元、Thank you (^_^)」と顔文字入りの手書きレシートを置いていった。どうやって請求しようか、悩んでいたらしい……いや、べつに食い逃げはしないから。ここもログハウス風の作り、車埕にある建物は全て木造で統一されているようだ。しかもどれも新しい。ここ何年かで、この地域全体の開発を進めているようだ。鉄道、発電、林業をからめて、小さいながらもテーマパーク的な展開をしていくつもりらしい。

 駅に戻る。駅おばちゃんにお礼を言い、荷物を受け取る。ベンチに座っていたら、また雨が降り始める。するとおばさん、ビニール袋を持ってきて「ほらこれに木桶入れて。ちゃんと持って帰ってね」(以上、推定訳)。新烏日までの帰りの切符を買う。なんと、硬券、しかもおばちゃんが目の前でハサミを入れてくれる。台湾ローカル鉄道の旅、ここに完結。

 15時49分発で、台北着は19時06分。夕食は、久々に微風台北車站Breeze Taipei Stationへ。相変わらずの賑わい。何処にしようか目移りしてしまうが、台湾夜市コーナーの台南擔仔麺で、台南蝦捲飯無刺虱目魚肚湯を食べる。蝦捲飯は、エビのフリッターのような唐揚げのような物がメインのどんぶり。エビはまあそれなりだが、付け合わせの高菜や竹の子が美味しかった。虱目魚は台南で一般的な養殖魚で、それを台湾風のあっさりスープにしてある。鯉かブリのお吸い物のような、体に優しい感じ。

 食後のデザートは、鮮芋仙へ。芋圓、仙草、豆花と言った、台湾デザートを提供するチェーン店だ。九份(九分)で食べ忘れた芋圓を選択、具材によって1號から6號まであるが、珍珠+綠豆+蓮子の1號を注文。まあ要するに、お汁粉ですね。

 台湾、6日目、明日は早いので、早めに就寝。


06/25 end


Photo
蚵仔麵線と飯糰puffin 蚵仔麵線と飯糰
妙な取り合わせの朝食です。
集集線の車窓からpuffin 集集線の車窓から
ただひたすら、ローカル線の旅です。
雨に煙る車埕駅puffin 雨に煙る車埕駅
水里駅から、トンネルを抜けると、山に囲まれた静かな世界に入ります。
木桶弁当のある風景puffin 木桶弁当のある風景
雨、上がりました。
芋圓puffin 芋圓
店頭にメニューの書かれたチラシがあり、チェックして差し出せば簡単に注文できます。
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