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2008taiwan 06/22
 台湾は朝からチープグルメ、ホテルの朝食セットなど食べている場合じゃありません。ホテルから南へ少し歩き、MRT台大醫院(台大医院)駅から一つ先の中正紀念館駅へ。MRTの出口は國家戲劇院の大きな建物。周囲も立派なビルが建ち並ぶ綺麗な通りだ。しかし愛國東路を歩き、紀念館の敷地が終わったところに数件の潰れかけた(ように見える)家屋がある。目指す盛園豆漿だ。

 ここは台湾朝食の三種の神器、豆漿(台湾風の豆乳)、油条(台湾風揚げパン)、そして鹹豆漿(豆漿と油条の合体スープ)を提供する老舗店。朝から多くの人が詰めかけ、周りには果物やよくわからない物を売っているトラックが並び、ちょっとした朝市状態になっている。店頭では次々と揚げられる油条がフランスパンのように立てかけられている。他にも水煎包(韮まんじゅうやの様な物)など、色々店頭で作っているので直接指差しで注文しましょう。

 鹹豆漿を注文。砕いた油条をお椀に敷き詰め、ネギや小エビ等の具材を入れた上から熱々の豆漿を注ぐ。豆乳が少し凝固して、朝から体に優しい豆腐スープだ。豆漿に油条を浸しながら食べている人も多い。これも台湾朝食の伝統的スタイル。それにしても熱々なので、食べていると朝から汗をかくことになる。

 MRTの駅まで台湾民主紀念館(以前は中正紀念館と言う名前だったらしい)の巨大な公園を歩く。太極拳をしたり、歌や楽器の練習をしていたり、朝の憩いの場になっている。民主紀念館は、ラスト・エンペラーでも出てきそうな驚くほど巨大な中国風建築物。蒋介石を追悼して作られたと言うからまさしく現代のピラミッドだ。鯉に餌をあげたり(自動販売機で買えます)しながらゆっくりと散歩をするが、次第に日差しが痛くなってきたのでホテルに戻る。

 さて、今日は今回の旅行で唯一の“外泊”の日、阿里山森林鐵路(阿里山森林鉄道)による阿里山観光。1泊分の荷物を準備して台北駅へ。夢の台灣高速鐵路(台湾高速鉄道)、別名、台湾新幹線のホームへ向かう。台北駅へ乗り入れる全ての列車(台灣高速鐵路=高鐵(高鉄)、臺灣鐵路管理局=臺鐵(台鉄)、台北捷運=MRT)は地下化されていて、高鉄と台鉄のホームは、お互い直接の行き来は出来ないが、仲良く並んだ所にある。実は昨日から高鉄の鮮やかなオレンジ色のユニフォームが気になっていた。

 まずは改札。キャッシュカードサイズの磁気チケットを自動改札機に通し、出てきた切符を引き抜かないとゲートが開かない。また切符を入れる向きも決まっているので戸惑う人も多く、高鉄の職員が改札につきっきりで対応している。さすが洗練されたフランス製、日本の“歩きながら改札”に慣れていると、なんともまどろっこしい。

 さて、改札を通っても地下2階のホームまではまだ降りられない。発車時間が近付くまで、今暫く待合室のような所で待たされる。なんだか飛行機の搭乗開始を待っているようだ。エスカレーターの仕切りがとられるやいなや、急いでホームへ。やっと新幹線とご対面。おおう、まさしく日本の新幹線だ。紆余曲折、産みの苦しみを経て、はるばる海を渡ってきた姿に思わずなでなでしたくなる。

 早速搭乗。今日は贅沢に商務車廂(日本で言うところのグリーン車)を利用。車両の入り口には女性の乗務員が居て、笑顔で迎えてくれる。外見同様、車内も日本の新幹線と大きな違いはない。もちろん、大きな荷物を置くスペースが確保されていたり、緊急出口が設定されていたり、車両間の自動ドアは“開”ボタンで開けたり、台湾仕様も随所に盛り込まれている。なんだか日本仕様よりも素晴らしい。10時6分、定刻どおり、出発。

 板橋站(板橋駅)Banciaoを過ぎたあたりで、なんとドリンクとスナック菓子のサービス(無料です)。先ほど笑顔で迎えてくれた乗務員が、ワゴンを押して訪れる。日本でもおしぼりくらいは出るけど、完全に日本以上のサービスだ。リラックスし、冷房の効いた快適な車内で、だんだんと南国へと移り変わる景色を眺める。季節は夏至、照りつける太陽は今が盛りだ。

 嘉義站(嘉義駅)Chiayiに到着。本日の新幹線乗車はここまで。明日以降も、まだまだ乗ります。駅の構内にはセブンイレブンと、なんとモスバーガーがある。ここから台鉄の嘉義駅までシャトルバスで移動する。もたもたしていたらバスが行ってしまい、次のバスまで20分待ち。時刻は12時、嘉義はちょうど北回帰線上に位置する町で、夏至前後の今の時期、真上から照りつけるお昼の太陽は最小の影を作り出すのみ。立っているだけで背中に汗がしみ出てくる。檳榔(びんろう)を噛み、口を赤く染めたタクシーの客引きがいっそう暑さを感じさせる。

 シャトルバスは田園風景を抜けて嘉義の街へ。車道中央寄りの専用車線をガンガンぶっ飛ばす。バス停も道路の真ん中にあり、横断歩道を利用して渡る。大きめのバス停に停まるときは注意してみていたつもりだが、気づいたときには嘉義駅を2つ3つ過ぎてしまっていた。仕方がないので折り返し便に乗り、今度は注意して嘉義駅へ。ターミナル駅だと思っていたのがくせ者で、バス停は「台鐵嘉義後站」、つまり駅の裏側、バス停からはとても駅があるとは想像できない。シャトルバスを利用される場合は、路線図をあらかじめ用意して、乗り過ごさないようにご注意下さい。

 今日の目的、阿里山森林鐵路(阿里山森林鉄道)の案内所は駅の表側(反対側)。駅をまたぐ歩道橋を渡り、到着した時はもう出発時刻の30分前。今回チケットは旅行代理店、三普旅行社で手配してもらったのだが、台湾初日の夜、三普旅行社から電話があり、「阿里山鉄道は、経営者が変わったとかで無料キャンペーン中です。案内所で払い戻してもらってください」との事。半信半疑でチケットを差し出すと、確かに払い戻しされた。旅行社への手数料は戻ってこないが、チケット代、儲けたぜ。

 時間が無いのでセブンイレブンでおにぎりを買い急いで乗車。休日なので混雑を予想したが、ほぼ100%程度の乗車率。4両編成、日本のJRより狭い超狭軌のため車両も小さく左2列、右1列の横3列の座席。700系新幹線も作っている(って事は台湾新幹線も作ってるのかな)日本車両製のディーゼル機関車に押され、予定どおりにゆっくりと出発。

 なかなか冷房が効かず、車内は少し暑い。町中を通り過ぎると、畑の中に椰子の木が点在するのどかな風景。そのうち高度が増してくると、椰子の木(檳榔椰子(びんろうやし)と思われる)そのものが斜面に植えられた風景へと変わる。樟脳寮Jangnauliauを過ぎるといよいよ鉄道ファンお待ちかね、3重ループ(+最後に8の字)に入る。ぐるぐると回っているような、そうでもないような、ほとんどトンネルなのであまりループしている実感は無い。しかしトンネルの合間、たまに見下ろす風景からは、着実に高度が上がっているのがわかる。獨立山Dulishanを過ぎる。途中「樟脳寮駅が見おろせます」ポイントがあるが、停まってくれないのでよくわからなかった。ここまでで約1時間半、距離にして3分の1。

 だいぶ冷房が効いてきた。って言うか、外気温が下がってきたのか。景色は熱帯から、亜熱帯へ(この看板はかろうじて発見、一瞬で通過するので注意)。竹林が目立つようになる。獨立山までは左側は山ばかり、右側の方が圧倒的に良い景色だったが、この辺りからは五分五分か?、どうやら尾根道を右に左に登っているらしい。途中駅で結構乗り降りがあるが、皆何処から来て何処に行くのだろうか。

 弁当で有名な奮起湖Fenchihuは、途中駅最大の街。乗り降りがいっそう激しい。ここから終点の阿里山Alishanまで登山鉄道を楽しむ人も多いようだ。ちなみにここの標高は1,403メートル、JRで一番高い所にある野辺山駅(長野県)の1,346メートルを既に超えている。出発点の嘉義駅が標高30メートルであることを考えると、その“登山鉄道っぷり”の凄さがわかる。ここまでで約2時間半、距離にして3分の2。

 屏遮那Pingjenaを過ぎると標高1,800メートルの境目が訪れる。亜熱帯から温帯への変わり目だ。台湾紅檜の森となり、時々霧が立ちこめるようになる。ここからいよいよ阿里山鉄道のクライマックス、連続スイッチバックに入る。車内にはおそろいのベレー帽をかぶった阿里山鉄道のスタッフが何名か居て、その中の1人、イケメンのお兄さんがまだ動いている列車から飛び降りる。列車の後方に駆け戻り、スイッチバックの切り替えを行う。そしてまた動き始めた列車に飛び乗る。神木Giant-Treeを過ぎると、終点までは、もうすぐだ。

 出発から4時間弱(今日は予定より遅れ気味)、やっと到着。これだけの時間、ひたすら登り続ける鉄道というのもなかなか出来ない体験だろう。一斉に降りた乗客でホームは大混雑。木造の立派な駅舎は1999年の台湾大地震による崩壊後に建て直された物らしい。標高2,200メートル、駅から少し下ると土産物街があり、そこの時計台に示された気温は21度。さすがに涼しい。

 さて、今日の宿は阿里山鉄道の途中駅、奮起湖のホテルに予約をしてある。下りの鉄道はもう無いので、バスかタクシーで行くことに。土産物街の下が大きな一般駐車場になっていて、その一角にあるセブンイレブン……こんなとこでも24時間営業!!……の前がバス乗り場になっている。セブンイレブン店内に掲げられているバスの時刻表を見ると……え、最終の下りは17時10分?、ちっ、終っちまってるっよ。仕方がない、タクシーは……何処で待てばいいの?何処にも居ないじゃん。

 何台かの車に「奮起湖」と書いた紙を見せヒッチハイクを試みるが失敗。ただ1人、檳榔を噛む怪しい男が4,000元とふっかけてきた。その値段なら阿里山で一番良いホテルに泊まれる。だんだんと日は暮れて、チュニジアの空港以来の思考停止状態(2004年の旅行記参照)。

 今回奮起湖にこだわったのはホタルを見たかったから。阿里山観光の定番コースは、阿里山に泊まり、翌朝ご来光を見に行くパターン。しかし別に日の出には興味はないので、それよりも日本でも珍しくなってきたホタルの姿が奮起湖では一年中見られるというので、そちらの方に興味があったのだ。しかしヒッチハイクをしようにも、人の動きも少なくなってくる。たくさん居たホテルの客引きも見あたらなくなってしまった。万事休す。

 敗北感を感じながら、ホテル探し。駐車場から更に下、ホテル街を目指す。ガイドブックに出ていたホテルに行く予定だったが、階段を下りて1軒目、ガラス張りのロビーの奥から「ホテル探してますか?部屋ありますよ」といきなり日本語が聞こえてくる。人の良い、ちょっと気弱そうなおじさんが笑顔で出てきた。「今空いている部屋でしたら1,000元です」。早く荷物を下ろしたい気持ちだったので、九割九分九厘、断るつもりはなかったが、一応部屋を見せてもらってから決定。ついでに薦められるまま日の出ツアーも申し込んだ(1人300元)。廊下側にしか窓のない、寝るだけのような部屋だが、設備は古いながら清潔に保たれている。坂の上の土産物街にも最短距離だ。まあ、良しとするか。ところでここは、なんてホテル?

 敗北感を引きずったまま、晩飯を食べに出かける。坂の途中の食堂で、牛肉炒麵(牛肉の台湾風焼きそば)と、雞腿飯(鳥から揚げ飯)と、竹筍湯(竹の子スープ)を注文。暮れゆく山並みを眺めながらの夕食。竹の子の優しい味が、心と体に染みいる。失意の3日目、終わり。


06/22 end


Photo
鹹豆漿と盛園豆漿puffin 鹹豆漿と盛園豆漿
朝からこの賑わい。民主紀念館にお越しの際は、ぜひお立ち寄りを。
阿里山森林鉄道puffin 阿里山森林鉄道
小さなディーゼル機関車で押し上げる。田園を抜け、茶畑を通り、森の中をスイッチバック。
霧の阿里山鉄路puffin 霧の阿里山鉄路
なにがどうなったらこんな幻想的な写真になるのか、よくわからないが奇跡の一枚。
阿里山駅puffin 阿里山駅
地震で崩壊後に建て直された綺麗な駅です。
祈願合格puffin 祈願合格
気圧の変化でパンパンなポテチ。受験シーズンなのか、各メーカーとも合格祈願菓子が見受けられました。
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